「なぜ鍼灸は効くのですか?」
この質問を受けると、正直なところ、少し考えてしまいます。
というのも、この問いに一言で答えるのは簡単ではないからです。
鍼灸の効果の説明が難しい理由
原始人に電気を説明するとしたら
例えば、原始人が現代にタイムスリップしてきて、
あなたが電気のスイッチを入れたとします。
おそらく原始人は、こう聞くでしょう。
「魔法を使ったの?」
あなたが
「魔法じゃないよ。スイッチを押しただけだよ」
と答えたとして、納得してもらえるでしょうか。
おそらく無理でしょう。
電気という概念そのものを知らないからです。

「鍼をしたから治った」は説明にならない
では、同じことを鍼灸に置き換えてみます。
患者
「どうして鍼をしたら痛みが消えたのですか?」
鍼灸師
「このツボに鍼をしたからです」
これでは、説明になっていません。
しかし、実は
鍼灸の効果を説明する難しさは、これに非常によく似ています。
鍼灸が効く理由は一つではない
鍼灸の効果を説明しようとすると、
- 東洋医学の概念(経絡・気)
- 現代医学的な視点
- 解剖学・生理学・病理学
など、さまざまな要素が関わってきます。
そして、一つの視点から説明すると、
別の視点では矛盾が生じることもあります。
経絡の説明が「わかりにくい」理由
例えば、東洋医学の立場から説明すると、
「人の身体には経絡という流れがあり、
その流れが整ったことで痛みが取れました」
という説明になります。
この説明を聞いて、
「なるほど」と感じる方もいれば、
「よくわからない」と感じる方もいるでしょう。
それは、この説明が
東洋医学の前提を共有していないと理解しにくい
からです。
現代医学の常識だけでは説明しきれない
経絡やツボを、解剖学的に
「ここにあります」と示すことは簡単ではありません。
また、「気」という概念も、
現代医学の枠組みだけで理解しようとすると
違和感が生じやすいものです。
そのため、
- 東洋医学は胡散臭い
- 何をしているのかわからない
と感じてしまう方がいるのも、無理はありません。
それでも治療は成り立っている
しかし、ここで重要なのは、
説明が難しいことと、効果があることは別である
という点です。
スイッチを入れると明かりがつく。
理由を知らなくても、事実としてそうなります。
同じように、
- 適切なツボに
- 適切な刺激を与える
ことで、症状が改善するという事実があります。
東洋医学は経験の積み重ねから生まれた
東洋医学は「経験医学」とも呼ばれます。
- この症状には、ここを使うと良い
- この反応が出たときは、こうすると変化する
そうした膨大な経験の積み重ねから、
理論や体系が形作られてきました。
見解は一つではない
例えば、腰痛の方に
膝の裏にある「委中」というツボに鍼をしたところ、
腰の痛みが楽になったとします。
東洋医学では、
- 腰を通る経絡の流れが整った
と説明します。
一方、現代医学的には、
- 痛みを抑える物質が分泌された
と説明することもできます。
どちらか一つが正解、というわけではありません。
最後に:私なりの答え
「どうして鍼をしたら痛みが消えたのですか?」
この質問に対して、
私が最もしっくりくる答えは、こうです。
「人の身体は、不思議ですね」
説明としては不十分かもしれません。
しかし、事実として身体は変化します。
だからこそ、
- 治療に納得してもらう努力
- 学び続ける姿勢
これは、治療家として欠かせない責任だと考えています。
治療ができれば、何も知らなくていい。
私は、そうは思っていません。
