遠絡療法の基礎知識
遠絡統合療法(遠絡療法)とは、痛みや不調のある部位を直接施術するのではなく、身体から離れた手足のポイントを押圧することで症状の軽減を目指す施術法です。
鍼を使わず、身体が本来持つ「生命の流れ」を整えることを目的としています。
一般的には「なぜ痛いところを触らないのか?」と疑問を持たれやすい施術法ですが、遠絡療法では局所症状は結果であり、原因は別の場所にあると考えます。
そのため、身体全体のバランスと流れに着目したアプローチを行います。

遠絡療法の基本理論|一按即消という考え方
一按即消とは何か
遠絡療法の基本理論の根底には、中医学の古典『易経』に記されている
「一按即消(いちあんそくしょう)」という考え方があります。
これは
「ツボを押した瞬間に、症状の変化が現れる」
という意味です。
適切なポイントに、適切な刺激が加わったとき、身体は即座に反応を示します。
遠絡療法は、この即時的な変化を重要な判断基準としています。
離れたポイントで症状が変化する理由
遠絡療法では、痛みや不調のある場所から離れた手足のポイントを使います。
これは、創始者である柯先生が「一本鍼」の臨床経験の中で、一か所の刺激だけで症状が改善する現象を多数確認してきたことが背景にあります。
この経験をもとに、
「鍼を刺さなくても、押圧によって同様の反応を引き出せる」
という考え方が体系化され、遠絡療法が確立されました。
遠絡療法が重視する生体の流れ
ライフフロー(生体の流れ)の基本概念
遠絡療法では、「身体」という構造体よりも、
「生命体としての人間」に注目します。
人の身体には、本来スムーズに巡るべき生命活動の流れがあり、
これを「ライフフロー(生体の流れ)」と呼んでいます。
症状や不調は、このライフフローが滞った結果として現れるものであり、
遠絡療法ではライフフローを整えることで、結果として症状の改善を目指します。
ライフフローを構成する要素
ライフフローには、以下のような要素が関わっていると考えられています。
- 生命力の流れ
- イオンの流れ
そして、それらが流れる媒体として、
- 血液
- リンパ
- 神経
- 内分泌系
などが存在します。
これらが滞りなく循環している状態が、健康な身体の基本条件となります。

遠絡療法独自の調整ルート
東洋医学の経絡との違い
東洋医学では、経絡の中を「気・血・水」が流れていると考えます。
一方、西洋医学では、血液やリンパなど実在する物質を中心に治療が行われます。
遠絡療法では、そのどちらとも異なり、
ライフフローの通り道そのものを調整対象とします。
このライフフローの通路を、遠絡療法では
「生体ライン」として体系化しています。
生体ラインの構成と特徴
生体ラインは、臨床を通して一つひとつ効果を検証しながら構築された、
遠絡療法独自の調整ルートです。
- 手足に左右それぞれ6本(計12本)
- 身体の正中線(前後)に2本
合計14本のラインで構成されています。
東洋医学における「経絡」と似ていますが、ラインの走行や考え方は同一ではありません。
ライフフローを整える要点
押圧ポイントの考え方
押圧ポイントとは、生体ライン上に存在し、
ライフフローを調整する役割を持つポイントです。
東洋医学の経穴と重なる部位もありますが、
遠絡療法では独自に検証され、体系化されたポイントとして扱われます。
108か所の押圧ポイント体系
押圧ポイントは、
- 1つの生体ラインにつき9か所
- 合計108か所
設定されています。
それぞれのポイントには役割があり、適切に使い分けることが重要です。
遠絡療法で最も重要なポイント
Cポイント(Control Point)とは
Cポイントは「Control Point」の略で、
生体ライン同士をつなぐ役割を持つ、遠絡療法において最重要のポイントです。
各生体ラインに1か所ずつ、合計12か所存在します。
東洋医学の絡穴との関係
Cポイントの位置は、東洋医学でいう絡穴とほぼ一致しています。
これは、遠絡療法が東洋医学の理論を踏まえつつ、臨床的に再構築された施術法であることを示しています。
症状に対応するポイント
Fポイント(Function Point)とは
Fポイントは「Function Point」の略で、
ライフフローの流れを調節し、症状の変化を引き出すためのポイントです。
遠絡療法で実際に効果を出すためには、Fポイントの正確な選定が不可欠となります。
Fポイント選定の重要性
Fポイントは、疼痛部位や症状に対応するポイントであるため、症状の場所や性質を正確に把握する必要があります。
選定がずれると、十分な効果は期待できません。
そのため、遠絡療法では「診立て」が非常に重要になります。
遠絡療法の押圧方法
二点同時押しの考え方
遠絡療法では、
- Cポイント
- Fポイント
この2点を同時に刺激する「二点同時押し」が基本手技となります。
二点を同時に押圧することで、
ライフフロー(生体の流れ)が調整されると考えられています。
押圧手技の種類|補と瀉の理論
深圧(Cポイントの押圧)
Cポイントには、深く安定した押圧(深圧)を用います。
ライン全体をコントロールするための重要な刺激となります。
補(ほ)の手技とは
補の手技は、
生体の流れを補うことを目的とした押圧方法です。
基本的に、ライフフローの流れに沿った方向へ押圧を行います。
瀉(しゃ)の手技とは
瀉の手技は、
ライフフローを阻害している要因を取り除くことを目的とします。
ライフフローに逆らう方向へ、力強く、反復的に押圧するのが特徴です。
補と瀉には明確な規則があり、ただ強く押せばよいわけではありません。
まとめ|遠絡療法は生命の流れを整える施術
遠絡療法は、
- 痛いところを直接施術しない
- 鍼を使わず、手足のポイントを用いる
- 「身体」ではなく「生命の流れ」に着目する
という、非常に特徴的な施術法です。
ライフフローを整えることで、
結果として痛みや不調が軽減していく——
それが遠絡療法の基本的な考え方です。
遠絡療法の基礎を知ることで、
「なぜ離れたポイントで身体が変わるのか」が、より明確に理解できるようになるでしょう。
澁谷 年英
年英堂治療院 院長
あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
日本遠絡統合医学会 副理事長
年英堂治療院
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住所:静岡県沼津市原290-6 八郎ビル1階
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