薬や注射に頼らない治療という考え方
― 遠絡医学における「同種のエネルギー」の原則 ―
病気やケガの治療と聞くと、
多くの方は「薬」や「注射」を思い浮かべるかもしれません。
確かに、
ウイルス感染や急性炎症など急性期の疾患においては、
薬や注射が非常に高い即効性を発揮します。
しかし一方で、
- 何年も続く慢性的な痛み
- 原因がはっきりしないしびれ
- 薬を飲み続けても改善しない症状
こうしたケースでは、薬が十分に効果を発揮しないことも少なくありません。
そこには、治療の世界におけるひとつの重要な原則が関係しています。
原因と治療は「同じエネルギー」が働く
遠絡医学では、
原因と治療は、同種のエネルギーを用いる方が効果的である
という原則を重視します。
- 化学的な原因 → 化学的な治療(薬)
- 物理的な原因 → 物理的な治療(手技・力学)
- 精神的な原因 → 精神的なアプローチ
例えば、
外傷や衝撃、姿勢や使い過ぎといった物理的ストレスで起きた不調に対して、化学物質である薬だけで改善させるのは難しい場合があります。
極端な例ですが、
「恋の病」は医者の薬でも、温泉でも治らない、
という話を聞いたことがある方も多いでしょう。
原因と治療のエネルギーが一致していなければ、本質的な改善にはつながりにくいのです。
慢性痛の多くは「流れの滞り」から生じる
特に、
- 針で刺したような鋭い痛み
- 動かした時に出る痛み
- 同じ場所に繰り返し出る症状
こうしたケースでは、
「外力(物理的エネルギー)」が原因となっていることが多くあります。
遠絡療法では、
この状態を「ライフフロー(生体の流れ)」の滞りとして捉えます。
外力によって生じた滞りには、
体表から行う押圧や徒手による「力学的刺激」が、非常に有効に働くことが分かっています。

医学の進歩と「循環」という視点
現代医学は、
薬・手術・再生医療・医療機器など、驚くほどのスピードで進歩しています。
一方、東洋医学はどうでしょうか。
東洋医学は、
数千年前に確立された理論を何度も検証し、「循環」という自然の原理を深め続けてきました。
その代表が陰陽五行論です。
自然界は直線的に進歩するのではなく、循環を繰り返しながら成熟していく。
この考え方は、医療にも当てはまります。
遠絡医学における進化「遠絡六行」
遠絡医学では、
陰陽五行論を土台としながらも、臨床的な実用性を高めるために進化させてきました。
そのひとつが「遠絡六行」という考え方です。
- 症状の進行順序
- 臓腑の連動
- 表裏・同名・時間軸(子午流注)
これらを統合的に捉えることで、
より自然に、より身体の流れに即した治療が可能になります。
自然界は「5」よりも「6」の構造の方が安定する。
この視点も、遠絡医学の特徴のひとつです。

力学療法としての遠絡療法
手技療法は、
病院では「物理療法(物療)」と分類されることがあります。
- 電気療法
- 温熱療法
- 徒手矯正
- 押圧や調整
これらはすべて、
物理エネルギーを用いた治療です。
では、
人体が「力学的エネルギー」によって不調を起こすとは、
どういう状態なのでしょうか。
外力がかかる場所は治療ポイントになる
人は日常生活の中で、
- 転倒する
- ぶつかる
- 追突される
- 同じ動作を繰り返す
といった外力を受け続けています。
また、
- いつも荷重がかかる場所
- よく使う関節や筋肉
- 職業病やスポーツ障害(ゴルフ肘など)
こうした部位も、
力学的ストレスが集中する重要な治療ポイントです。
外力が加わった場所、
あるいはその影響が波及する場所を見極めることが、
力学療法では非常に重要になります。
子どもの治療に見る「力の集まる場所」
興味深い考え方として、
「子どもの疾患は身柱と命門で対応できる」という説があります。
四つん這いの赤ちゃんが、
- 頭を持ち上げるとき
- 座るとき
その際に力が集中する背骨上のポイントが、
まさに「身柱」「命門」にあたります。
成長の過程で最も力が集まる場所を整える。
これもまた、
力学的エネルギーを用いた治療の一例です。
薬に頼らない治療が必要な理由
遠絡療法は、薬や注射を否定する治療ではありません。
しかし、
- 薬で改善しなかった症状
- 慢性化した痛みやしびれ
- 原因がはっきりしない不調
こうしたケースでは、
原因に合ったエネルギーで治療することが重要になります。
遠絡療法は、
身体に加わった外力や流れの乱れに対して、力学的にアプローチすることで、自然治癒力が働きやすい状態へと導く治療法です。
