本記事は「現代医学の穴~東洋医学は補完できるのか?」シリーズの第3回です。
EBM・画像診断・保険診療という3つの視点から、東洋医学の立ち位置を整理しています。
👉画像診断は万能ではない?レントゲン・MRIで分からない不調とは【第2回】
現代医学の穴~東洋医学は本当に補完できるのか?③
保険診療では届きにくい「未病」という領域
日本の医療制度は、世界的に見ても非常に優れています。
国民皆保険制度により、誰もが比較的低い自己負担で専門的な医療を受けることができ、重篤な疾患の早期発見や治療に大きく貢献してきました。
この保険診療という仕組みが、多くの命を救ってきたことは間違いありません。
しかし、その完成度の高さゆえに、対応が難しい領域も存在します。

「病名」がなければ治療が始まらない仕組み
保険診療は、
- 診断
- 病名
- 標準治療
という共通の枠組みの中で基本的には成り立っています。
これは医療の質を一定に保つために不可欠な仕組みですが、
同時に、
- 病名がつかない
- 検査で異常が出ない
といった場合、治療の選択肢が一気に狭まるという側面があります。
実際には、
- つらい症状はある
- 日常生活に支障もある
- しかし「異常なし」と言われる
というケースは決して珍しくありません。
その結果、
- 「様子を見ましょう」
- 対症療法としての投薬
- 薬が増えていく
という流れに入りやすくなります。
白か黒か、その間にある「グレーゾーン」
保険診療は基本的に、
- 病気である
- 病気ではない
という白黒の判断を求められます。
しかし、人の体の状態は本来もっと連続的です。
- 疲れが取れない
- 冷えやすくなった
- 眠りが浅い
- 以前と比べて回復が遅い
こうした状態は「病気」とは言えないものの、
明らかに健康とも言い切れません。
このグレーゾーンに対して、
保険診療では十分な手段が用意されていないのが現実です。
東洋医学が重視してきた「未病治」
東洋医学では古くから、
「未病(みびょう)」
という考え方が重視されてきました。
未病とは、
- まだ病名はつかない
- しかし放っておけば悪化する可能性がある状態
などを指します。
症状が出てから対処するのではなく、
- 体の巡り
- バランス
- 体質や生活習慣
を整えることで、
病気に進行する前の段階で立て直すという発想です。
これは、保険診療が不得意とする領域を補完する考え方でもあります。
病気を見るか、人を見るか
保険診療は「病気」を中心に診ます。
東洋医学は「人」を中心に診ます。
どちらが正しいという話ではありません。
- 命に関わる急性疾患
- 明確な病変がある場合
には、現代医学が圧倒的な力を発揮します。
一方で、
- 慢性的な不調
- 原因がはっきりしない症状
- 検査では異常が出ないつらさ
に対しては、
東洋医学的な視点が役立つ場面が多くあります。
保険診療を補完するという選択
東洋医学は、保険診療の代替ではありません。
また、現代医学を否定するものでもありません。
- 検査で重大な病気を除外する
- 必要な医療はきちんと受ける
その上で、
- 体の回復力を高める
- 不調の背景を整える
といった役割を担うことが、
東洋医学の「現代」の重要な役割ではないかと考えています。
まとめとして
第1回では EBM
第2回では 画像診断
第3回では 保険診療 を取り上げてきました。
いずれも現代医学の大きな強みでありながら、
同時に「当てはまらない人」が存在する理由でもあります。
東洋医学は、その隙間を埋める可能性のある医療です。
どちらの方が優れているのかという問題ではなく、
適切に使い分け、組み合わせることが、現代の医療に求められている姿ではないかと思います。

