「自分に合う治療を受けたい」
多くの方が、そう思って治療院を探しているのではないでしょうか。
その一方で、
「鍼治療は私には合わない」
という声を耳にすることも少なくありません。
では、「自分に合う治療」とは、いったいどのような治療を指すのでしょうか。
「合う」「合わない」は何で決まるのか
鍼灸治療に限らず、どのような治療法であっても、「合う・合わない」があるのは確かです。
問題は、その判断基準がどこにあるのか、という点です。
私自身、臨床の現場で感じている「合う・合わない」の軸は、主に次の2つです。
- その治療に納得感や安心感があったか
- 身体に何らかの変化や手応え(効果)を感じられたか
細かな要素はいくつもありますが、多くの場合、この2点が判断の中心になっているように感じます。
「合わない」と感じるときに起きていること
例えば、
- 症状は少し楽になったが、治療そのものに不安や違和感が残った
- 治療は嫌ではなかったが、身体の変化をほとんど感じられなかった
こうした場合、多くの方は
「この治療は自分には合わない」
と感じるのではないでしょうか。
一方で、
- 治療内容に納得でき
- 身体にも良い変化を感じられた
この両方がそろえば、「自分に合う治療だった」と感じるはずです。
つまり、「自分に合う(と感じる)治療」とは、
治療に納得でき、なおかつ何らかの効果を実感できた治療
だと言えると思います。
鍼灸治療における「効果」とは何か
ここでいう「効果」は、必ずしも
「痛みが完全になくなること」
だけを指すわけではありません。
鍼灸治療では、
- 呼吸がしやすくなった
- 身体が温まりやすくなった
- 眠りの質が変わった
- 回復の方向性を感じられた
といった変化が現れることも少なくありません。
こうした変化も、身体が整い始めているサインであり、立派な治療効果の一つです。
「合わない」の正体は「合わなかった」だけかもしれない
ここで大切なのは、
「合う・合わない」は絶対的なものではない
という点です。
「私は鍼が合わない」と感じている方の中にも、
本当に鍼治療そのものが体質的に合わない方は、確かにいらっしゃるでしょう。
しかし実際には、
- そのとき受けた治療内容が自分に合っていなかった
- 十分な変化を感じられなかった
このどちらか、あるいは両方が当てはまるケースが圧倒的に多いように感じます。
この場合、「合わない」のではなく、
「そのときの治療が合わなかった」
と考えるほうが自然です。
鍼治療は「毎回同じ」ではない
鍼治療は、治療者によって考え方やアプローチが異なります。
また、同じ治療者であっても、
- その日の体調
- 症状の段階
- 身体の反応
によって、治療内容は変わります。
つまり、「以前受けた鍼治療」と「これから受ける鍼治療」は、
同じ治療ではありません。
「薬」に置き換えて考えてみると
例えば、ある薬を服用して効果を感じなかったとき、
「私は薬そのものが合わない」と考えるでしょうか。
ある薬でかゆみが出た場合も、
「すべての薬が合わない」とは思わないはずです。
合わなかったのは「その薬」であって、「薬全体」ではありません。
鍼灸治療も、それと全く同じです。
治療の選択肢を狭めないために
「一度受けて合わなかった=一生合わない」
この考え方は、とてもよく見られます。
しかし治療は、その時点の体調や状態によって、受け取り方が大きく変わります。
以前受けた鍼治療が「合わなかった」からといって、
「鍼治療は自分には合わない」と決めつけてしまうと、
本来得られたかもしれない選択肢を、自ら狭めてしまうことになります。
大切なのは、
「合わなかった経験」と「治療そのもの」を切り分けて考えること。
その視点を持つだけで、治療との向き合い方は、きっと変わってくるはずです。

